まきのお風呂

まきのお風呂
僕の家のそばに、まきでお風呂をたくおじさんが住んでいます。午後三時を過ぎると、煙突から白い煙がもくもくと出てきます。僕も今度そのお風呂に入れてもらうことになっています。僕の祖母は、子どもの頃、まきでお風呂を沸かすのが子どもの仕事だったのでとても大変だったと言っていました。僕もお手伝いでお風呂を入れますが、居間でリモコンの「ふろ自動」のボタンを押すだけで、ボイラーで灯油を燃やしてお湯が入る仕組みです。ところがこの灯油や火力発電に使用される石油資源には限りがあり、今のペースで使い続ければ四十年で使い尽くすと言われています。この便利で快適な生活がいつ終わってしまうのかと不安になることがあります。

そこで今回エネルギーについて調べてみました。日本の発電の割合は、火力が六十パーセント、原子力が三十パーセント、水力が十パーセント位です。火力発電では石油を燃やすため、二酸化炭素が多量に発生し、地球温暖化に悪影響をもたらします。石油の埋蔵量が限られていること、原油が高騰し費用がかかることも問題になります。また、水力発電はダムを建設することで自然破壊をもたらすこと、ダムを造る適当な場所が限られていることが問題になります。一方、原子力発電の最大の特徴は一カ所で多量の電気が造られることです。火力、水力のように発電所をたくさん造らなくても電力が間に合います。原子核の反応を利用するので二酸化炭素を出さず理想的なエネルギーだと思いました。日本のように資源の限られた国では、原子力発電が救世主のように思えました。しかし、原子力発電にも大変な問題があることがわかりました。ウランを燃やした後に出る放射性廃棄物は、数百年から数万年以上にわたって強い放射能を持ち続けるものも多く、ガラスで固めて深い地層に埋めて処理しなくてはいけません。また、ウラン燃料の燃焼により、一パーセントのプルトニウムが出来ます。ウランの埋蔵量は六十年分ですが、プルトニウムを燃料として再利用すればウラン燃料の六十倍使え、千年以上の間エネルギーを得ることが出来ると言われています。しかし、プルトニウムは猛毒で、体内に入ると骨や肝臓に沈着して放射腺を出し続け周囲の組織を破壊します。プルトニウムの微粒子を吸入した場合には肺癌を誘発し、わずか百万分の一グラムでも死に至るそうです。豊かで快適な生活の裏に多量の放射性廃棄物が生じ、未来に対して環境汚染と言う負の遺産を遺すことになります。また、日本中の原発が一年間に生み出すプルトニウムは約九トンでこれは千発以上の原爆を作れる量です。さらに一番怖いことは原発事故です。もしもチェルノブイリ事故のようなことが起こると、放射能汚染のために狭い日本では安心して住める場所が無くなってしまいます。たくさんのエネルギーが作れると言うことは、一度事故が起これば広い範囲が放射能で汚染され大きな被害になるということです。

一方、水力、風力、地熱、太陽光などの自然のエネルギーを使った発電は、費用がかかるものの二酸化炭素は発生しません。これらはいくら使っても無くならないクリーンなエネルギーだと思います。日本は火山がたくさんあるのでそれを利用して、地熱発電を増やした方がいいのではないかと思います。また、各家庭で太陽光発電を利用したり、省エネ家電を購入したり、エコカーに乗るなど使用するエネルギーの節約方法が考えられます。そして、電気のスイッチをこまめに切り、冷房は二十八度、暖房は十八度に設定するなど一人一人の努力が大切なことは言うまでもありません。今の豊かで便利過ぎる生活を見直し、出来るだけ機械を使わないまきのお風呂に入るような、多少不便でも精神的に豊かに暮らしていくことが大事だと思いました。
(2006.8.17:長野日大中学校1年:結城貴和)

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