斜陽の時代

平成の終わりに感じることは、斜陽の時代を迎えたということです。昭和から平成になり、新しき良き時代が訪れることが期待されていたはずですが、残念ながら、平成はわが国の衰退期の始まりとなったようです。1990年バブルが崩壊し、1995年には阪神淡路大震災、オウム真理教事件が起き、2011年3月11日に東日本大震災が発生し、翌日忌まわしい原発事故が起きてしまいました。阪神淡路大震災で日本列島は地震の活動期に入ったといわれ、東日本大震災の後には、熊本地震、北海道地震と大地震が立て続けに起こっています。また、地球温暖化による異常気象のために猛暑となり集中豪雨が多発、強い台風が日本を直撃するようになり、日本は亜熱帯化してしまったかのようです。天は荒れ、地は揺れ、人は争い、平静とは程遠く騒々しい時代となってしまいました。パンドラの箱が開かれた後に残る希望を見出すことができるのでしょうか?

2007年、わが国では65歳以上の高齢化率が21%を越え、「超高齢社会」を迎えました。2025年には団塊世代が75歳以上の後期高齢者となり、人口の30%が75歳以上という「超・超高齢社会」を迎えることになるそうです。人と同様に社会インフラの老朽化も問題とされています。2018年8月14日、イタリア・ジェノバの高速道路の高架橋が建設後50年で突然崩落し、30台以上の車を巻き込み多数の死傷者が出る事故が起きました。わが国でも、2012年12月2日に笹子トンネル天井板落下事故が起き、9名の犠牲者が出ています。道路、橋、上下水道などの公共インフラの耐用年数はおよそ50年と言われています。わが国では1960年からの高度成長期に30年間に年間10兆円、総計300兆円掛けて多くのインフラが建設されています。国土交通省の調べでは、全国40万余りの道路橋が、建設50年以上経過する割合は平成35年度には43%となり、平成45年度には67%に達し、社会資本全体の維持管理・更新費用は年間5兆円かかるとのことです。建設業界では「花の建設・涙の保全」と言う言葉があるそうです。新規の建設は華々しいため、政治家も誘致に熱心であり、公共予算も多くつくそうですが、目立たない補修・保全に対する予算は少なめであり、地方自治体が苦労しているとのことです。人にせよインフラにせよ健康状態の維持管理には多大なコストが必要になりますが、バブル時代のツケでもある箱物行政の末路が不安になります。

人類が劣化し、折角築き上げた文明が朽ちていくのではないかと危惧されます。自然科学の発達により人類は自然をコントロールできる力を得るようになりました。そして原子力という「プロメテウスの火」を手にするに至りました。人類を滅ぼすほどの強大な力を手にしても適切にコントロールすることは難しいことです。科学者に良心があったとしても、現実には政治権力者が核力を支配することになるため、理性的に使用されるかどうか不確実な世界になりました。長崎大核兵器廃絶研究センターは、世界に存在する核弾頭数は2018年推計1万4450発としています。2009年にオバマ大統領の「核なき社会」の追求を表明したプラハ演説があり、2015年にはイラン核協議が最終合意され核軍縮が進んできました。しかし、2018年にトランプ大統領がイラン核協議の合意を破棄したため核軍縮は後退しています。人類滅亡までの時間を示す「世界終末時計」の針はオバマ大統領就任後には5分前から6分前にまでに戻りましたが、福島原発事故で3分前となり、トランプ大統領が登場してからは残り2分となっています。冷戦期の1952年に米国とソ連が水爆の実験を行なった時に記録された過去最悪の「残り2分」と並んでいます。民主主義で選ばれた大統領とはいえ、世界平和が1人の人間に翻弄されるリスクを目の当たりにしています。

人間が経済活動を優先することで、森林伐採など自然破壊を進め、化石燃料を燃やすことで温室効果ガスを増やし地球温暖化をもたらしていると言われています。それに対して、異常気象、エボラ熱などのエマージング・ウイルスなどの自然の痛烈なしっぺ返しが起こってきているようです。2017年11月、科学誌バイオサイエンスに「世界の科学者による人類への警告」が発表されました。この25年間で世界の人口が約20億人増え、環境問題が深刻化し、地球温暖化が進み、平均気温が約0.5度上昇、脊椎動物は約3割減少し、魚が棲めない死の海「デッドゾーン」が拡大しているとのことです。声明では、現状維持では取り返しがつかない状態になるとして「時間切れが迫りつつある」と訴えています。人類がとるべき対策として、人口抑制策、二酸化炭素を排出する化石燃料から再生可能エネルギーへの切り替え、野菜中心の食生活、子供たちへ環境教育を進めることなど13項目を提言しています。

人と人、国と国の争いなどという小事に振り回されるよりも、地球を守っていくと言う大きな視点が人類の生存のために必要だと思われますが、自国第一主義のリーダーが目立ち、地球規模のリーダーは不在のようです。フリーマン・ダイソン氏は、インターネットが、最終的には、全体がひとつの生き物のように振る舞うスーパーオーガニズム(超生命体)になるかもしれないと言っています。人類が自らをコントロールすることができないとすれば、スーパーネットワークが生み出す人工知能(AI)が人類を導くのでしょうか。それとも地球の最大の破壊者は人類であるとして人類を滅亡させてしまうのでしょうか?