急いては事を仕損じる
ICTの普及で便利な世の中になってきています。クレジットカード、電子マネーに続き、第三世代のキャッシュレス決済としてQRコードやバーコード読み取り型のモバイル決済が普及してきています。政府は2016年におよそ20%であったキャッシュレス決済の比率を2025年までに40%、将来的には80%まで引き上げる目標を掲げています。令和の時代となり、わが国もようやくキャッシュレス社会に移行してきたようです。
2019年7月1日にはセブン&アイ・ホールディングスが“7pay”を、ファミリーマートが“FamiPay”を開始しました。しかし、7月3日には“7pay”のアカウント乗っ取りと不正利用が発覚しています。被害者は808人、被害総額は3861万円に達し、サービス開始から僅か3か月後の9月30日に“7pay”は廃止されることになりました。記者会見では、社長が「二段階認証」を知らなかったことが露呈され、火に油を注ぐ事態になりました。他社に遅れないことを優先し、セキュリティーを甘くした結果、最も求められる信用を失ってしまいました。
セキュリティーを強めると逆に利便性が損なわれます。モバイル決済では利便性と安全性の両立が求められますが、時間が限られた中で何を優先するのか。長く使うものであれば、多少の手間が掛かったとしても安全第一とすべきであり、短期的成功よりも長期的安定が求められます。「急がば回れ」で安全確実なシステムを作ることが必要であったのではないかと思われます。