開業医の後継者不足
開業医の高齢化は確実に進行してきていますが、後継者不足が問題になっています。2004年から始まった新医師臨床研修制度で卒業して直ぐに医局に入ることがなくなりました。2年の初期研修の後に、医師は自由に専門分野や勤務先を選択できるようになり、旧来の医局制度に縛られることなく、ワークライフバランスを重視する傾向が強まっています。特に、心臓血管外科や産婦人科といった専門性の高い分野や、地方での勤務を敬遠する傾向が見られます。医局制度で新人をリクルートすることが出来なくなり、大学が関連病院に医師を派遣することが難しくなっています。医局支配が強い時代は半強制的に医師が派遣されていましたが、医師が自由に勤務先を決めるようになり地方に行く医師は少なくなりました。また医師の働き方改革で勤務医の労働環境が改善されてきています。昔は当直明けで連続32時間勤務は当たり前でしたが、今は当直明けは休みか半日勤務となっています。65歳定年まで働き、その後は健診医や老人施設の嘱託医として働くことを考えている勤務医が多いと思います。昔は病院勤務の当直が辛く、激務から逃げるような逃避型開業が多かったのではないかと思われますが、働き方改革で病院の居心地が良くなり、リスクのある開業を考える医師は少なくなっていると思います。以上から、開業志向の医師が減少し、条件の良い都会で開業する医師はいても地方で開業する医師は少なくなっていると思います。さらに、医学部受験の難化により、開業医の世襲が難しくなり、開業医の数が減少する一因となっています。都会での開業規制や保険点数引き下げなどが検討されていますが解決は難しいと思います(開業の自由の制限や全国一律費用とならない不平等の問題が生じます)。
開業医の減少は、地域医療の崩壊につながる可能性も孕んでいます。医師を地方へ誘引するためには、都市部と地方部の医療環境の格差を是正し、地方でも専門医資格を取りやすくすることや、子弟の教育環境を充実させることなどが喫緊の課題と思われます。