毒薬になった神サプリ ー 健康食品がもたらす健康被害 ー

小林製薬の「紅麹コレステヘルプ」による健康被害が拡大している。4月10日時点で、221人が入院、5人が死亡したと報告されている。紅麹自体は古くから発酵食品の原料として使用されていた。中国では古くから漢方素材として知られ、日本でも赤色の食品用天然色素として幅広く使われている。紅麹にはコレステロール合成阻害作用のある「モナコリンK」が含まれている。米国メルクは「モナコリンK」をコレステロール抑制剤(ロバスタチン)として開発し発売している。「紅麹コレステヘルプ」は単なる健康食品というよりむしろ医薬品に相当する効果のあるサプリといえる。紅麹菌が生成するカビ毒・シトリニンが腎臓障害を引き起こすことが知られていたが、小林製薬は全ゲノム解析でシトリニンを作る遺伝子を持たないことを確認した紅麹菌を使用していたという。2023年に製造された「紅麹サプリ」の製品ロットの3割から、青カビ由来の毒素「プベルル酸」が検出されており、健康被害の原因となった可能性があり、製造工場の衛生管理が問題視されている。

アベノミクスの成長戦略の一環で2015年4月に機能性表示食品制度が始まった。消費者庁が1件ずつ審査して許可するトクホ(特定保健用食品)と異なり、機能性表示食品では安全性に関する科学的根拠を届け出るだけで、商品に「コレステロールを下げる」といった文言を表示できる。中小企業の参入も相次ぎ、マーケットは急成長している。国が安全性や有効性を審査して承認した医薬品・ワクチンには、適正に使用して重大な健康被害が生じた場合、医療費の給付等の救済の仕組み(医薬品副作用被害救済制度)があるが、健康食品にはない。機能性表示食品の規制が甘く、健康になるために摂取したサプリで健康被害を起こすという悲劇を生んでいる。原因の解明、被害者の救済、機能性表示食品制度の見直しが必要とされる。小林製薬の「紅麹サプリ」は年間約6億円を売り上げたが、該当商品の回収費用は18億円の見込みとされる。健康食品の安全性よりも企業の利益を優先したツケは大きなものとなる。

「無香空間」と同じ大阪工場で作られた「紅麹サプリ」からは異臭が漂っている。