新型コロナウイルス感染症「5類」引き下げ − 安易な引き下げは危険 −
2019年1月15日に初めて国内で新型コロナウイルス感染者が確認されてから3年になる。これまでのわが国の感染者数は3000万人に、死亡者は6万人に達している(2023年1月8日)。新型コロナウイルス感染症は、感染力が強く重症度も高い感染症として、2019年2月に感染症法で「2類相当」に位置付けられた。昨年からオミクロン株が主流となり、致死率や重症化率が低下したことなどから、厚生労働省は分類の見直しに向けた議論を進め、今年4月から季節性インフルエンザと同じ「5類」への引き下げることを検討している。公費負担となっている医療費を自己負担とするのか、検査・医療機関がのみ行っているコロナ診療を一般の医療機関でも行うのか、ワクチン接種につき今年の春以降は有料とするのか議論されている。安易な引き下げは危険である。感染力の指標である基本再生産数は、季節性インフルエンザは1.3、オミクロン株は8とされている。オミクロン株は短期間で空気感染により家族内感染、施設内感染を起こし、感染者の爆発的増加を招いている。80歳以上の死亡率は当初の8%から1.7%に低下し、季節性インフルエンザ並みとなっている。しかし、感染者数が多いため、1日の死亡者数は498人と過去最高に達している(2023年1月5日)。感染がコントロールされていない状況で「5類」へ引き下げることはリスクを伴う。医療費が自己負担となり受診抑制が起こり、自治体や保健所による感染制御の介入が解かれ、感染流行状況は把握されず、更なる感染爆発を招く可能性がある。「5類」で「一般の医療機関での診察も可能になる」との意見もあるが、感染力の強いコロナ患者を院内で診療すれば院内感染のリスクが高まるだけである。ソフトランディングできる最適解が求められる。